大阪生活

大阪生活の記録

経験を重ねるということ

最初の出張のことはよく覚えている。前の日の夜にヘルメットと作業服、安全靴と防塵マスクを大きなキャリーケースに詰め込んだ。そいつを転がしながらワインレッド(小豆色とも言う)の阪急電鉄に乗り込んだ。そのまま新大阪駅で先輩と合流して改札を抜け、キオスクで緑茶を買った。岡山行きののぞみに乗り込み、窓際の席に座る。新幹線に乗るなんて修学旅行か会社の最終面接くらいしかなかったのでとってもワクワクした。こんな速い、こんな綺麗な乗り物にぼくは乗れるなんてなんて幸せな人間なんだって。

あれから2年が経った。毎週のように新幹線に乗ってあちこちへ行く毎日。新幹線に乗るワクワク感はとっくに失われた。これが大人になるってことなのかね。初めて一眼に触れた時の感動、お店でピアノを弾いた時の感動、1人でビザを取りに行った時の感動、日本人の居ない世界の果ての街に降り立ったときの感動、初めて熟成肉を口にしたときの感動、色々な経験を積み重ねることは幸せなことかもしれないけれど、逆に言えばそれは世界に少しずつ少しずつ慣れていくのと同意なので、あの世界が一気に色づいたような感動を覚えることは少なくなっていくのかもしれない。