大阪生活

大阪生活の記録

一年がまた過ぎる

こうして一年がまた過ぎていく。昨年末からは特に何が変わったわけでもなく、強いて言えば春先にひとつ歳を重ねただけ。つまりぼくがこの一年で成し遂げたことのうち、自慢できることといえば、少しだけ死へ向かって歩みを進めたという純然たる事実だけでしょう。生まれてから四半世紀がゆうに経ち、自分の生まれた平成という一つの区切りがやがて終りを迎えるように、ぼくも生物として生きる以上絶対に避けられない死へ365日分近づきました。

そんな小さな人間の小さな心配はよそに世間は時計の針を進め、いつの間にかぼくは厳しい寒さに震えている。何ヶ月も前から、昨年購入したセラミックヒーターが大活躍している。朝方に目を覚まし、毛布と一緒にヒーターをとぼくの身体を包み込むようにして暖気を独り占めする。10分も温風に当たっていれば気分もほぐれ、つま先まで暖かくなる。その暖かみを外気に奪われぬよう急いで靴下を履く。

会社にはもう慣れてしまった。頑張るところとそうでないところが見えてくるので、無理せず日々の業務をなるべく効率的にこなすようにしている。単純作業はいろいろなツールを使い、見積作成や商品の手配もほぼ自動で行えるようになった(もちろん最終チェックは人間が行う)。実際、仕事にかかる時間の多くは承認に至るまでの時間と、先方への移動時間で占められる。承認さえすぐに下りれば週休4日でも仕事はなんとか回りそう。知らんけど。

ここ数ヶ月は特に目的もなく髪を伸ばしている。最後に切ったのは9月の頭なので、もう3ヶ月近く美容院へ行っていない(とは言いながら自宅でバリカンを使ってもみあげや襟足は処理してる)。お蔭で通常5000円近くかかるカット代が0円で済んでいる。最後にカットしてもらったときに調子に乗ってパーマをかけた。幸い今も若干ウネウネは残っている。これをざっくり切ってしまったらまたいつもの真っ直ぐな剛毛に戻るのが少し嫌だ。できればもっと伸ばし続けて、会社を辞めるタイミングで髪を後ろで括れるくらいになっていたいと密かに思っている。絶対似合わないとは知っているけれど、いつかやってみたい髪型ではある。

この前購入した富士フイルムのX-Pro2の写りが、実は以前から愛用していたCanonの6Dよりも写りが好みなことに気づいてしまった。もともと購入金額はそう大して違わないくらいだったと記憶している。ただ6Dはレンズ資産が沢山あるという理由と、人を写すときには肌色が良く見えるという理由もあって未だに売却しようと決心できていない。世間の潮流は一眼レフ機からミラーレス機へと急速に移行し、やがて一眼レフ機は大きくて重い、旧式のカメラとしてハードオフの片隅に積み上げられる日が来るのかもしれない(バケベンのように?)。

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そんな日が来ても、きっとぼくはなんだかんだ理由をつけて6Dを手放さないだろう。最初に買ったレンズ交換式のカメラで、彼とはいろいろなところへ行ってきた。初めて単焦点レンズを装着してファインダーを覗きこんだとき、そして撮影した写真をパソコンで目にしたときの感動が今でも思い出せる。ただ背景がボケただけじゃなかった。あのときはぼくが世界で一番いい写真を撮った気がしていた。懐かしい記憶だ。確か去年の冬頃だった。

音楽について。音楽はもう辞めてしまった。家にピアノが届いた頃は嬉しくて毎日のように練習していたものの、途中で真ん中のミの鍵盤が沈んだまま戻ってこなくなってしまってからは練習欲が急激に減退し、ジャズフェスに出て以来ほとんど触れていない。仕事も以前よりは忙しくなり、さらにカメラという趣味に没頭し出してからは早かった。毎日練習しないと綺麗な音が出せない楽器と、ただ対象物へ向けてシャッターを切るだけでそれなりの画が吐き出されるカメラとでは手軽さが違った。きっとぼくは趣味にかける時間や情熱をおおかた失ってしまったんだなと思った。今もこうしてパソコンのキーボードを叩いて誰に見せるでもない文章をただ無心に書いている。だって練習室取って電車乗ってお金払って楽器を練習するよりずっと楽だもん。つまらない大人になっちゃったな。

旅について。最後に遊びに行ったのは呉と尾道か。確かあれは9月の中旬だったかな。旅ってお金かかるよね。あれからもうどこへも行っていない。仕事ではもちろんあちこちへ行った。南は大分、北は岩手まで。でもあくまでも仕事で行ったまでで、一日のスケジュールの大半は商談や現場の視察に費やされている。自由時間はそう多くない。ぼくは街を適当に歩いて、雰囲気の良い店を外から覗き込んで入るか否かを考えたり、本来降りるべき駅のひとつ手前で下車して歩いたり、そういう気ままなことがしたいんだ。仕事でそんなことをしたらクビだよね。悲しいけど。ぼくはもうしばらく旅へは行くことはないと思う。少し疲れちゃった。

来年のぼくはどこにいて何をしているんだろう。何を考えているんだろう。早くも年末のような文章を書いているけれど、実はまだ今月に入って一週間しか経っていない。時間の流れは早くて遅い。周りがどんどん変わっていくなか、何も変わらずにぼんやりと日々を生き抜いている自分がいる。中身はなにも変わっていない。外見は少しずつ老いていき、昨年より確実に疲れている顔の自分が鏡の向こうに立っている。