大阪生活

大阪生活の記録

春が来た

今はちょうど山陽新幹線に乗っている。二年前の春から、それこそ長期休暇を除けばほぼ毎週のように新幹線に乗ってきた。新幹線はとても速い。新大阪から岡山まで一時間も経たないうちに到着できる新幹線だが、車で移動するとしたらそれこそ倍以上の時間と三倍以上の労力がかかる。

岡山を出て五分くらい経った辺りでは田畑の間にポツポツと立っている煙突が見える。ここにはずっと昔から続く備前焼の窯元があるんだ。最後に土に触ったのはいつだろう。少なく見積もっても十年間は触れてない。

季節は春、ようやく春が来た。今年の冬はヒートテック無しで越すことができて嬉しい。きっと去年の冬着たヒートテックは、ぼくのベッドの下辺りにごそっとまとめて置いてあるはず。最近は朝から晴れることが多くて、起きたときに薄っすらとカーテンから青空の色が透けて見えることもある。そういう朝は部屋の空気を入れ替えて、四年目に突入したティファールでお湯を沸かし、コーヒー豆を挽いちゃったりしたくなる(挽かないけどね)。

大阪に来て四年が経つ。大阪生活にも慣れた。土地勘が付いてきたし会社にも慣れた。毎朝惰性で御堂筋線に乗ってるし会社まで何も考えずに辿り着くこともできるようになった。何より、新幹線で寝落ちしてもちゃんと新大阪か岡山に着く頃には眼が覚めるようになった。幸いまだ新幹線で寝過ごしたことはない。

最近は虚しくなることが増えた。結局何もできずにこの歳になった。ごく普通の社会人、それもあれだけ忌み嫌っていたサラリーマンに順応していて、世間的に見れば普通以上の生活を送っている。きっとそれは見る人が見れば羨ましいものだろうとも思う。金が無いわけではないし仕事もとっても嫌なわけじゃない。数十年前のサラリーマンが抱えるものと同じような悩みを抱えて、けれど時にはセコく仕事してる。月曜朝は憂鬱で金曜夕方はウキウキしてる。つまんねぇ人間だよ。

昨日今日は悲しみがエゲツなかった。なぜだか知らないけど、こんな春の陽気と桜に満たされた幸せな空気感が楽しめなかった。特に出張では食べ物に頓着しないからか、ただ腹を満たして寝るだけの生き物になっている。悲しい。とても悲しい。昔って何が楽しかったんだっけ。