大阪生活

大阪生活の記録

穏やかな夜に身を任せるな

クリストファー・ノーランの映画が好きなんです、と彼は言った。入社してそろそろ半年になる後輩に好きな映画の話を振ったときのことだった。好きな映画を一つ挙げろと言われて即座に回答できる人はそう多くないと思っていて、どんなジャンルなのか、最近見た映画から選ぶのか、そういったジャンル分けをした上でなら苦し紛れに二つ三つ映画を絞り出すのがせいぜいだろう。彼は「三体」も履修しているようで、発売日に「黒暗森林」を買ったそうだ。とは言いながら途中で挫折したらしいが……

それまでは監督で作品を選ぶという視点があんまり無くて、クリストファー・ノーランと聞いても何を撮った人なのかピンとこなかった。けれどダークナイトインセプションインターステラーと聞いてようやく理解できた。バットマンダークナイトインターステラーは若干違うとは言え、「ああ、あのSFの」と曖昧な発言でお茶を濁してしまった。でも僕が好きな映画であるレオンを撮ったリュック・ベッソンでさえ、初期に「フィフス・エレメント」を撮ってるくらいだから作風は一概には言えないよな、と家に帰ってから思った。

その影響が少なからずあったんだと思う。インターステラーをこの前見た。3回目。映画館じゃなくて自宅シネマだけど迫力は十分だった。ブラックホールが実際に観測されたときのニュースを思い出して、ほんとにこんな形してたんだなぁと感慨にふけったり、マット・デイモンを見て「火星の人」を思い出してほくそ笑んだりした。映画では「穏やかな夜に身を任せるな」と誰かの詩が引用されていて、どんな意味なんだろなとは特に考えずラストシーンにしんみりしていたが、今夜はあまりにも穏やかな夜でつい映画のことを思い出してしまった。ネットで調べてもあまり腑に落ちない説明だったが、穏やかな夜に身を任せてもいいんじゃない、と酒の入った頭で考えている。一年のうちで最も過ごしやすい気候で、食べ物も美味しいし服を着ても暑くない最高の季節。秋よずっと続いてくれ。